この、原美術館 ARC という時間芸術<特別企画> ジャネット カーディフ:40 声のモテット

原美術館ARCは時間芸術なのではないか?
春には花びらが舞い、鳥がさえずり、初夏には草木が萌え、風が坂をわたり、盛夏には山から雲が沸き、夕立の後には東の空に虹がかかり、西には雲間から陽光のはしごが下りる。移ろう自然の中で翼を広げる磯崎新建築の端正さに心動き、天窓からの自然光の下で個性あふれる作品と出会い、回廊では黙々と草を食む羊の群れを遠くに眺め、屋外に出てはシロツメクサの咲く庭に点在する宮脇愛子の「うつろひ」や多田美波の「明暗」に環境とともにある作品のあり方を観る――ここにあるひとつひとつの要素がここにいる時間とともに緩やかに繋がってゆく原美術館ARCという美術館は、それ自体が詩のような、音楽のような芸術、つまり時間芸術なのではないかと思うのです。
2025 年春、原美術館 ARC におきまして、「この、原美術館 ARC という時間芸術」展を開催いたします。会期序盤には、特別企画としてジャネット カーディフによるサウンドインスタレーション「40 声のモテット」をギャラリーA にて期間限定で展示いたします(5 月 11 日まで)。トマス タリス(16 世紀イングランド王国の作曲家、王室礼拝堂オルガン奏者)作の 40 声の楽曲を再構成した本作は、2001 年の発表以来、世界各地で展示されているカーディフの初期代表作です。楕円形に立ち並ぶ 40 台のスピーカーの一台一台から一人一人の声が聞こえ、徐々に声が重なり合い、やがて40 人が今ここで歌声を響かせ合っているかのような臨場感のある場へと変化してゆきます。言葉にすれば数行ながら、音が構築する彫刻的空間の体験は圧倒的であり、アートが(言葉ではすくいきれないものであることを実感します。
会期が二部制となっております。展覧会「この、原美術館ARCという時間芸術」の企画詳細は、原美術館ARC公式サイトの展覧会ページをご覧ください。
第 1 期:2025 年 3 月 15 日(土)―5 月 11 日(日) 第 2 期:5 月 16 日(金)―7 月 6 日(日)
【展覧会一覧ページ】https://www.haramuseum.or.jp/jp/arc/exhibition/
<特別企画> ジャネット カーディフ:40 声のモテット
ジャネット カーディフ 「40 声のモテット」×磯崎新=ここにしかない光景

聖ヨハネ教会(オーストリア、フェルトキルヒ)での展示風景(2005 年)
Johanniterkirche, Feldkirch, Austria, 2005. Photo by Markus Tretter. Courtesy of the artist and Luhring Augustine, New York / Gallery Koyanagi ©Janet Cardiff
磯崎新が設計した原美術館 ARC のギャラリーA は、杉柱 4 本に支えられた高さ 12m の天窓から自然光が降り注ぎ、太陽の面前を雲が横切る度に光が移ろう空間です。現代美術作品に適したホワイトキューブの特徴を備えながらも自然の息遣いが感じられます。
「間」という日本的な時間・空間の美意識を論じた磯崎が設計したこの空間で、「40 声のモテット」、ジャネット カーディフによるサウンドインスタレーションを展観いたします。トマス タリス(16 世紀イングランド王国の作曲家、王室礼拝堂オルガン奏者)が作曲した「40 声のモテット」と呼ばれる多声楽曲である「Spem in Alium」をもとに制作されたカーディフの同名の作品は、2001 年の発表以来、ニューヨーク近代美術館(MoMA)を始め世界各地で展示、日本でも銀座メゾンエルメス フォーラム(2009 年)などで紹介された彼女の初期代表作であり、その作品力は鑑賞者の心を大きく揺さぶります。作品の形態として目の前にあるものは楕円形に立ち並ぶ 40 台のスピーカーのみですが、その一台一台から一人一人の声が聞こえ、徐々に歌声が重なり合い、やがて展示室は 40 人が今ここで歌声を響かせ合っているかのような臨場感のある場へと変化してゆきます。言葉にすればわずか数行ながら、音が構築する彫刻的空間の体験は圧倒的であり、アートが言葉ではすくいきれないものであることを実感する作品です。
原美術館 ARC では、その前身である原美術館(東京・品川)時代から、自館の建築や環境と作品によって“ここにしかない” 時空間が立ち現れることを鑑賞体験として重視してきました。かつてオラファー エリアソンの個展「影の光」が、蜷川実花の「うつくしい日々」が、リー・キットの「僕らはもっと繊細だった。」展が原美術館と見事に共鳴したように、「40 声のモテット」と原美術館 ARC のギャラリーA も、ここにしかない輝きを放つ一期一会の展示となるでしょう。
【特別企画 会期】
2025 年 3 月 15 日(土)―5 月 11 日(日)原美術館 ARC ギャラリーAにて展示
【特別企画詳細ページ】
イベント詳細
イベント名 | この、原美術館 ARC という時間芸術<特別企画> ジャネット カーディフ:40 声のモテット |
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日程 | - |
開催場所 | 原美術館ARC |
住所 | 〒377-0027 群馬県渋川市金井2855−1 https://g.co/kgs/QykYTWB |
開園時間 | 午前9時30分-午後4時30分(入館は午後4時まで) |
休館日 | 木曜日(5月1日を除く) |
入場料 | 【当日券】一般:1800円 シニア(70歳以上):1500円 大高生:1000円 小中生:800円 ✳︎この他にも前売りオンラインチケット、ドリンク付きチケットなどがございます。詳細は原美術館ARCのご利用案内ページをご覧ください。 |
URL | https://www.haramuseum.or.jp/jp/arc/ |